漢方の医学的根拠

近年「EBM=Evidence Based Medicine」が重視されています。
「根拠に基づいた医療」といった意味で、臨床試験で治療効果を確認し、そのデータを基に治療を行うべきだという考え方です。
漢方治療も同様です。

注目されている漢方薬の効果をご紹介します。

「大建中湯」で腸閉塞が減少

腸閉塞を起こした人に漢方薬「大建中湯(だいけんちゅうとう)」を用いたところ、再手術のケースが減ったと報告されています。
最近では腸閉塞の予防のために、手術後に「大建中湯」を用いることが増えているようです。
「大建中湯(だいけんちゅうとう)」の消化管運動を促進する作用が、手術後の癒着の抑制に役立つためだといわれています。

「牛車腎気丸」で抗がん剤の副作用を軽減

大腸がんに使われるオキサリプラチンなどで問題になる末梢神経障害には、「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」の効果が注目されています。
抗がん剤治療ではしばしば下痢が問題になります。
そうしたときに「半夏寫心湯(はんげしゃしんとう)」を併用すると良いとされ、「黄連湯(おうれんとう)」とともに抗がん剤の副作用に多い口内炎にも有効とされています。

「釣藤散」「抑肝散」で認知症を改善

「釣藤散(ちょうとうさん)」では、脳卒中などの後遺症で起こる血管性認知症による《元気がない症状》や《興奮性の症状》の改善が報告されています。
「抑肝散(よくかんさん)」ではアルツハイマー病などの《興奮しやすい、起こりっぽい症状》の改善が報告されています。

「六君子湯」で胃腸症状が改善

「六君子湯(りっくんしとう)」は古くから胃もたれや食欲不振に効く薬として知られています。
食欲を増進させる「グレリン」というホルモンの分泌を促したり、胃腸膜の血流を改善するなど、さまざまな作用が報告されています。

アレルギー性疾患に有効

漢方では、アトピー性皮膚炎などアレルギー性疾患における湿疹の状態や患者さまの体力・体質などに応じてさまざまな漢方を処方します。
外用ステロイド薬との併用では、ステロイド薬の減量効果も報告されています。
アレルギー性鼻炎では「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」で漢方診断「証」を考慮しなくても、約45%の人に効果が認められました。
「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」は気管支炎に対する有用性も報告されています。

生活習慣病の伴う症状の改善

生活習慣病の素地になりやすい肥満症についても「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」や「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
」で効果が報告されています。
内臓脂肪の減少がみられ、メタボリックシンドロームの津寮に有用ではないかと注目されています。